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理事長挨拶

日本腎臓病薬物療法学会 理事長 平田純生 (熊本大学薬学部臨床薬理学分野)

 「日本腎と薬剤研究会」改め「日本腎臓病薬物療法学会」理事長の平田純生です。2012年、"腎薬"が研究会から学会になり、いよいよ腎臓病薬物療法専門・認定薬剤師制度が確立されます。思えば1999年の暮れに関西腎と薬剤研究会が結成され、2000年の4月より年5回の講演会を開催し、その小さなともしびが日本各地に伝わり、2007年には日本で7か所の「腎と薬剤研究会」が生まれました。2006年、この7か所の「腎と薬剤研究会」の代表が大阪に結集して「日本腎臓病薬物療法学会」の前身である「日本腎と薬剤研究会」は腎臓病及び透析領域での薬物療法の幅広い学習と研究を行うこととともに腎疾患領域で活躍する医師、薬剤師、研究者等の情報交換の円滑化・結束をはかることにより医療に貢献することを目的として設立されました。

 2007年11月に大阪で第1回の学術大会を開催して以来、熊本、名古屋、東京と毎回500名以上の参加者があり、2011年の第5回の北九州大会では約1,000名の多くの参加者を得て盛大に開催いたしました。そして2011年には大きな組織改革を遂げ、地域の腎薬の数も14か所と5年間で倍増し、会員数も1,600人を超え、いよいよ2012年1月より「日本腎と薬剤研究会」は「日本腎臓病薬物療法学会」に生まれ変わりました。

 これに伴い、年3回以上の複数査読制の学会誌(大会要旨集を含む)を発行します。その会誌には投与設計に必要な薬物動態パラメータ情報を含めた詳細かつ最新の「腎機能に応じた薬物至適投与法表」を各巻の巻末に掲載し、会員であればHPでも最新の内容を閲覧が可能です。また2012年1月から腎臓病薬物療法研修修了者の申請受付・書類審査により研修修了書を発行し、日本腎臓学会、日本透析医学会とともに腎臓病薬物療法学会専門・認定薬剤師制度を新設します。この制度では上記研修修了者を対象に第1回の認定試験を実施し、専門薬剤師になるには30症例の報告が必要です。さらに腎臓病薬物療法学会認定・専門薬剤師テキストも発行いたします。

 今、医薬品の供給、調剤、服薬指導などが中心であったわが国の薬剤師の職能が大きく変化する兆しが見えつつあります。それは2012年より6年制カリキュラムを終了した薬剤師が生まれることと、2010年4月の厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が公表されたことによります。さらに、この通知に対して日本病院薬剤師会が解釈と具体例を明示しています。その具体例の1つとして「維持透析患者のミネラル代謝異常の管理」が挙げられています。非常に素晴らしい例示ですが、薬剤師にはもっともっとできることがあるはずです。

 2011年には腎排泄性の新規抗凝固薬による出血による死亡者が半年で23名現れました。そしてあの「埼玉調剤過誤事件」も2011年に明らかにされました。この死亡原因を考えると、腎排泄性のウブレチド®を高齢者に投与したことによって起こったことが容易に推測できます。このように薬物療法の適正化には腎臓が大きく関っています。腎機能の低下した患者に、腎排泄性の抗がん薬、抗凝固薬や抗不整脈薬を含むTDM対象薬などの副作用の起こりやすい薬物を常用量投与した場合、生命が危ぶまれるという重い教訓になりました。このような中毒性副作用は薬剤師がきちんと処方鑑査して用量を適正化し、副作用の初期症状が現れたらすぐに病院に来るようにという服薬指導を十分しておけば防げたはずのものだと思います。

 今も不適切な薬物療法によって有害事象は発生し続けています。私自身が考える薬剤師の定義は「有効かつ安全で、目の前の患者さんに配慮した最高の薬物療法を責任もって提供する人」です。我々には大きな使命があります。①腎機能低下患者への薬物適正使用・中毒性副作用の未然防止、②適切な服薬指導による腎機能悪化防止・心血管合併症の予防、③透析患者の合併症に対する最適な薬物治療の提供、④腎毒性薬物・腎虚血誘引薬物による薬剤性腎障害の防止・・・・・、挙げていくときりがありませんが、私はまず、この4点を強化したいと考えます。

 「腎領域における薬物適正使用」は広範にわたります。ジェネラリストであり、かつ腎スペシャリストが率先してやらなければならないことがこの4点に集約されると思います。これまで薬剤師について書いてきましたが、本学会は前述のように薬剤師だけでなく医師、基礎研究者を含めた他職種から成る学会です。軽度腎障害から透析患者、腎移植患者まで幅広い腎臓病、腎機能の低下した高齢者、あるいは腎が未発達の乳児に対して有効かつ安全な薬物療法の提供を推進することが、国民の健康と医療の質向上に貢献すると信じ、全力を尽くしたいと考えております。学会員の皆さまには何卒暖かいご支援とご協力を給わりますよう、よろしくお願い申し上げます。